成人年齢の引き下げが若者の「借金被害」増加に繋がる?

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2018年6月13日に成人年齢引き下げの改正民法が参院本会議で自民、公明、維新などの賛成多数により可決、成立しました。

施行は2022年4月1日、成人年齢が20歳から18歳に引き下げ、女性が結婚できる年齢が16歳以上から男性と同じ18歳以上へと引き上げられることになります。

この法案が成立したことにより、18歳から選挙権が得られる、10年間有効のパスポートが得られる、性同一性障害の人が家庭裁判所への性別変更を申し立てることができるといったポジティブな側面もある反面、高校3年生でも親の承諾なしに消費者金融からのキャッシングが可能となるため、若年層の借金被害、消費者被害の増加が懸念されています。

このページでは、成人年齢引き下げの法案が可決、成立したことによる、20歳未満の借金被害の増加、拡大について考察していくので興味のある方は是非お読みいただけると幸いです。


    未成年の借金被害の増加が懸念される最大の理由

    成人年齢の引き下げにより18歳から未成年者取消権の行使が不可


    現行の法律でも18歳だからローンの契約ができないということではありませんが、一部の中小消費者金融などの金融機関を除く、大手の消費者金融や銀行、信販会社では貸付の対象を成人している20歳以上に限定しています。


    このように、多くの金融機関がローンやクレジットカードといった金融商品の契約を20歳以上の成人のみとしている最大の理由として、「未成年者取消権」という法律の存在が挙げられます。


    「未成年者取消権とは」

    民法では、20歳以上が成年とされ(民法*4条)、未成年者は「制限行為能力者」として単独で有効に契約を締結することはできません。
    すなわち未成年者は、その法定代理人の同意を得なければ単独で有効に契約をすることができません(5条1項)。
    法定代理人の同意を得ないで締結した契約は取り消すことができるものとされています(5条2項)。
    法定代理人は、通常は親権者(父および母)を指しますから、未成年者が契約の当事者として有効に契約をするためには、法定代理人である両親の同意を得て自ら契約をするか、両親が未成年者に代わって(代理して)契約する必要があります。
    未成年者は、社会的に未成熟で経験が不十分で適切な判断ができない危険があるため、法律で保護すべきものと考えられているからです。

    引用元:国民生活センター「未成年者契約の取消」

    未成年者取消権は、社会経験が未熟で、単独では適切な判断がまだ難しいと考えられる、未成年者を保護する為の法律で、未成年者が親の同意なしで単独で行った契約については、契約の締結後でもあとから取り消すことができるよう定められています。


    現行では未成年者との契約は業者にとってリスクの高いものとなっている


    成人年齢引き下げ前のローン締結に対する未成年者取消権の行使


    この図解のように親の同意のない未成年者との契約(クレジットカード作成・マイカーローン・カードローンなど)は、「未成年者取消権」により、契約締結後でも取り消すことができると定められているため、現行では未成年者との契約は業者側にとって非常にリスクの高いものとなっています。


    特に、クレジットカードの作成や消費者金融や銀行の取り扱うカードローンなどは、親の同意が得られにくく、原則、連帯保証人を立てることがない契約となるので、未成年(18歳・19歳)との契約を行っている業者はほぼないと言えます。


    親の同意が得られる契約、親を連帯保証人とする契約については「未成年者取消権」の対象外となるので、親の同意を得やすく、ローン契約の条件として親を連帯保証人とすることが多い、自動車購入時に契約するマイカーローンなどについては、「未成年者取消権」の行使ができない契約となり、現行でも未成年者が契約するローンとして一般的です。


    「未成年者取消権」の行使対処外となる契約

    • 法定代理人(親)の同意を得た契約
    • 単に権利を得て、義務を免れる行為
    • 自由財産の処分
    • 許可された営業に関する行為
    • 婚姻した未成年者の行為
    • 未成年者が詐術を行った場合
    • 契約の相手方の催告権・法定追認など

    これらに該当する契約については「未成年取消権」の行使が認められません。


    詳細については以下ページで確認して頂けると幸いです。


    「未成年者取消権」の行使ができない契約:国民生活センター

    成人年齢引下げ後の18・19歳との契約は「未成年者取消権」の行使対象外となる


    成人年齢引き下げ後の18歳・19歳との契約


    2022年4月1日以降は、成人年齢が18歳となるので、18・19歳の若者も法的に保護されるものではなくなる為、20歳以上の者と同様に全ての契約が自分自身の責任の元で行われることになります。


    つまり、「未成年者取消権」を行使する権利を失うということです。


    今現在、申込の条件を20歳以上としている業者が、2022年以降18歳から申込可能とするかどうかは今の段階では分かりませんが、法的には高校3年生でも18歳になった段階で、自分の意思であらゆる契約ができるようになります。


    消費者金融や銀行が取り扱うカードローンやフリーローンといった直接お金を借りる契約については、安定した収入があることが申込の必須条件とされていて、これを高校生が満たすことができるとは考え難く、成人年齢が引き下げられたからと、高校生へ直接の貸付を行う金融機関は現れない可能性が高いと言えます。


    ただし、成人年齢引き下げ前の現在でも、20歳を超えアルバイトなどで収入があれば学生(大学・短大・専門など)でも利用可能とされている、消費者金や銀行のカードローン、フリーローンは多く存在しています。


    高校を卒業し、「就職して正社員として収入を得ている18歳・19歳」「進学して、アルバイトなどで一定の収入を得ている18歳・19歳」であれば、カードローン・フリーローンといった無担保、保証人なしでの個人向け融資の契約、クレジットカードの作成を単独で行えるようにする金融機関は多くなると予想されます。


    「未成年者取消権」の喪失により若者の借金被害の増加が懸念される


    飲酒や喫煙、ギャンブル、選挙権などの規定については各国によって異なりますし、アルゼンチンやシンガポールのように今現在の日本よりも成人年齢が高く制定されている国もありますが、「成人年齢は18歳」というのが世界的なスタンダードだと考えられています。

    また、同じ20歳、同じ18歳でも社会経験、判断能力には個人差があるので、一概に成人年齢引き下げが若者の借金被害の増加に繋がるとは断言できませんが、何かしらの対策が施行されない限り、民法改正後の若者の借金被害は増加する可能性が高くなるのではないかとゼニエモンは考えています。

    飲酒・喫煙・公営ギャンブルについては、健康被害、ギャンブル依存症への懸念から成人年齢引き下げ後も「20歳以上」を維持することが決まっています。


    世界の成人年齢

    国名 年齢 国名 年齢
    アメリカ 州ごと ドイツ 18歳
    アルゼンチン 21歳 トルコ 18歳
    イギリス 18歳 ネパール 16歳
    イタリア 18歳 プエルトリコ 14歳
    オーストラリア 18歳 ブラジル 18歳
    キルギスタン 16歳 フランス 18歳
    シンガポール 21歳 ベルギー 18歳
    スイス 18歳 メキシコ 18歳
    中国 18歳 ロシア 18歳

    「未成年者取消権」を喪失する20歳から消費トラブルの相談が3倍以上に増加

    以下データは、国民生活センターと消費者生活センター等に設置された端末機をオンラインで結ぶ、「全国消費者生活情報ネットワークシステム(PIO-NET:パイオネット)」を利用して、全国の消費生活センター等で受け付けた「苦情相談」を収集したものです。


    消費生活センターへの消費トラブル相談件数の年代別割合


    国民生活センター:「消費生活年報2017」


    20歳代から受けた消費トラブルの相談割合は、20歳未満の相談件数の3倍以上です。


    相談を行ったのが契約者本人か、別の人かという内訳も発表されているのですが、20歳未満では約66%が契約者以外からの相談といなっています。


    「自身の判断と責任のもとで契約を行えるようになった途端に消費被害のトラブルに遭うことが多くなっているということ」「20歳未満の未成年単独では、消費被害の解決が難しい」ということが分かります。


    また、国民生活センターが今年の5月末にまとめた平成23年〜29年度の消費者金融やカードローンなどに関する相談は、18・19歳の平均が177件だったのに対し、20歳〜22歳の平均では2560件と、14倍以上という結果も出ています。


    一部、「就活商法」や「デート商法」といった若者が被害に遭いやすいとされる悪質な契約については、年齢を問わず取消可能とされたので、成人年齢引き下げ後も「未成年者取消権」の行使が可能ですが、直接的な借金被害に繋がるリスクの高い、消費者金融やカードローン、クレジットカードなどについては、今の段階では特に何の対策も施行されていないのが現状です。


    国会審議でも野党などから被害防止策が不十分との声が上がっていることもあり、2022年4月1日の成人年齢引き上げまでに、若者を消費被害から守るための何らかの法整備がなされる可能性もありますが、現状のままで施行された場合、18歳・19歳の借金トラブル件数は、増加していくと考えられます。


    成人年齢引き下げにより懸念される若者の借金被害増大についてのまとめ


    18歳・19歳の「未成年取消権」が失効される
    法的には高校3年生も単独で消費者金融でのキャッシングやクレジットカード作成が可能となる

    「未成年取消権」の喪失を狙い闇金や詐欺などを行う悪徳業者が現れる可能性がある

    カードローン、フリーローンといった貸付業務を行う消費者金融、クレジットカードを取り扱う信販会社、各企業が成人年齢引下げが実施された後で、18歳・19歳との契約に対してどうのような対応を取るかは、今の段階ではまだ定かではありません。


    が、改正民法施行までに何かしらの法整備が行われなかった場合には、法律上「18歳の高校生」でも、単独でキャッシングやクレジットカードの契約が可能となります。


    高校生の場合、安定収入が見込めないので、消費者金融や信販会社にとって、利息で得られる収益よりも、貸倒れのリスクの方が高くなるので、高校に在学している18歳との契約を行う業者は少ないと予想されます。


    ただ、法改正に伴い「未成年取消権」の行使ができなくなるところを狙い、業者が一方的に利益が得られ、契約者となる若者が大きな負債を背負ってしまうような契約を持ちかけてくる、闇金や詐欺まがいのことを行う悪質な業者が現れる可能性は大いにあります。


    契約に際して18歳・19歳の若者が自己責任で単独で正確な判断をするのは難しい

    本当に必要な時に、本当に必要な金額だけを、正規の消費者金融やクレジットカードのキャッシング枠から借入することは決して悪いことではありません。


    ただ、成人年齢20歳以上とされている今現在でも、借金の増大し返済が困難になり、最終的には債務整理を行わなければいけないような状況に陥る人も、多いのが現状です。


    同じ18歳、同じ20歳でも、個人によって社会経験、受けてきた教育が異なり、物事に対する判断力の高さの違いがあるとは言え、高校を卒業したばかりの18歳・19歳の若者が、単独で正確な判断をするのは非常に難しいと言えます。


    特に、高校卒業後は就職や進学により親元を離れ、一人で生活を始める若者も多く、身近に相談できる大人が少なくなることもあり、余計に借金被害・トラブルに遭う可能性が高くなります。


    成人年齢引き下げによる若者の借金被害増加を防ぐためには


    成人年齢引き下げ後の若者の借金被害の拡大、トラブルの増大を防ぐためには、「未成年者取消権」などについての追加での法整備が最も効果的なのではないかと考えられますが、参院法務委員会が政府に求めた追加での法整備は、本会議の採決で、国民民主、立件民主、共産などが反対したこともあり、現行のまま成人年齢の引き下げの改正民法は施行される可能が高くなっています。

    なので、民法改正後の消費トラブルに遭わないようにするには、18歳になる前の段階での学校や親からの教育が重要になると言えます。

    ただ、その教育だけで、若者の借金被害の発生を抑えることは非常に難しいと言え、何らかの法整備がなされない限り、成人年齢改正後の、若者の消費トラブルは増加してしまうリスクが高くなってしまうというのがゼニエモンの見解です。

    すべての若者に対して言えることですが、特に2022年4月1日以降に20歳の誕生日を迎えることになる人は、どんな契約についても、安易に決定するのではなく、事前に徹底的にリサーチする、その上で少しでも不安が残るのであれば契約を行わない、もしくは信用できる大人にまず一度相談をしてみるようにすることを強く推奨します。

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